冬は窓からの冷気や結露に悩まされ、室内の快適性を上げるために内窓を検討している方は多いはずです。
しかし既製品のコストや業者手配の手間、さらに正確な採寸や木枠の気密処理に不安を感じて踏み切れないこともあります。
この記事では費用を抑えつつ安全に進められる、内窓を自作するための木製枠の作り方を図解と手順で丁寧に解説します。
採寸・窓タイプ確認・構造設計・木材寸法算出・面材や金具選定・工具一覧・組立手順・気密・断熱処理・仕上げ点検まで一通りカバーします。
初心者向けの注意点や失敗を防ぐコツ、必要な材料リストも掲載するので、順を追って作業を進められます。
まずは採寸編から読み進めて、安心して作業を始めましょう。
内窓DIY木枠の作り方
内窓用木枠を自作する際の全体像をまず説明いたします。
ここでは採寸から作業順序まで、初心者でもわかりやすい手順で解説します。
採寸
正確な採寸は成功の鍵で、まず既存窓枠の内側寸法を計測してください。
幅は上中下の三点、縦は左右の二点を必ず測るようにしてください。
誤差を防ぐため、各部の測定は金属巻尺を使い、記録はミリ単位で残すと安心です。
測定結果から組み立て余裕をどう取るかを決めます。
窓タイプ確認
窓の種類によって木枠の形状やレール位置が変わります。
引き違い窓、片引き窓、開き窓、縦すべり窓などを確認してください。
サッシの突出やハンドルの位置もチェックし、干渉しないかを確認します。
複層ガラスや面格子がある場合は、それらを考慮したクリアランスを確保する必要があります。
構造設計
木枠の基本構造は外周フレームとレール溝、そして面材を受けるラビットです。
フレームの厚みは断熱性能と強度の両面で決めます。
窓の開閉荷重や面材の重量を考慮して補強を入れる箇所を決めてください。
換気や水抜きのためのクリアランスも設計段階で組み込みます。
木材寸法算出
まず測定した窓内寸法から外枠の外形を決めます。
フレーム厚みを加えた総幅と総高を算出し、加工誤差として上下左右に余裕を残します。
例えば、窓幅900mmで左右にそれぞれ3mmの遊びを取る場合、内窓の幅は894mm前後が目安になります。
レールや面材の厚みを差し引いた実際の木部寸法を最終決定してください。
面材選定
面材は断熱性と安全性、重量をバランスして選ぶ必要があります。
中空ポリカやアクリル板は軽量で断熱性があり、取り扱いが容易です。
ガラスを使う場合は二重ガラスや強化ガラスを検討し、木枠の補強を忘れないでください。
音対策が重要であれば厚手の面材や複合構造を選ぶと効果的です。
金具とレール選定
レールと金具は開閉の滑らかさと気密性に直結します。
耐久性とメンテナンス性を優先して選ぶと長期的に安心です。
| 種類 | 特長 |
|---|---|
| アルミレール | 軽量 耐久性 |
| ステンレスレール | 錆に強い 耐久性高 |
| 樹脂レール | 低摩擦 断熱性 |
| キャッチ金具 | 気密向上 取り付け簡単 |
実際の取り付け性を重視するなら、サンプルや実物で滑りを確かめてください。
作業順序
作業は無理のない順番で行うことが重要です。
下準備が終わってから切断、溝加工、組立という流れが基本になります。
- 採寸
- 材料カット
- 溝加工
- 仮組み
- 本組み
- 面材挿入
- 仕上げ処理
各工程で仮組みと検寸を繰り返し、誤差を早期に発見することをおすすめします。
安全対策を徹底し、必要に応じて二人作業で進めてください。
材料選定
内窓の木枠は素材選びで性能が大きく変わります、断熱性や強度、加工性をバランス良く考えることが重要です。
ここでは代表的な木材と面材、そしてシーリング材の特徴と選び方をわかりやすく解説します。
米松
米松は年輪がはっきりしており、軽くて加工しやすいのが特徴です。
曲げや反りが比較的少なく、長手方向に強度が出るため木枠の部材として使いやすいです。
ただし節が多い種類もあり、見た目を重視する場合は節の少ないロットを選ぶか、集成材で代替することを検討してください。
塗装や防腐処理を施せば屋内で長持ちします、塗りの相性も良好です。
赤松
赤松はコストパフォーマンスが高く、ホームセンターでも手に入りやすい材料です。
やや柔らかめで加工がしやすい反面、傷つきやすい点には注意が必要です。
節や色ムラが多いものもあるので、仕上がりを重視するなら選別が欠かせません。
乾燥状態を確認してから使用すると、組み立て後の反りや収縮を抑えられます。
集成材
集成材は複数の板を接着して作るため、寸法安定性に優れており反りが出にくい特性があります。
強度が均一で、長い部材も安定して供給されるため大きな内窓枠に向いています。
接着層がある点と端面の処理に注意が必要ですが、仕上げに向く平滑な面が得られます。
屋内用途ではコストと耐久性のバランスが良く、迷ったら最初に検討する価値があります。
合板
合板は薄い板を貼り合わせて作る面材で、強度と平滑性が両立します。
用途別に多くの種類があるため、目的に応じて選ぶとよいです。
- 構造用合板
- ラワン合板
- 化粧合板
- 耐水合板
例えば化粧合板は仕上がりがきれいで、見える部分に適しています。
耐水合板は湿気が心配な場所で有効ですが、価格が高くなる点に注意してください。
中空ポリカーボネート
中空ポリカーボネートは軽量で断熱性が高く、ガラスの代替として人気があります。
割れにくく安全性が高いので、子供のいる家庭や破損リスクのある場所に向いています。
以下の表で代表的な特性を簡潔に比較します。
| 特性 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 断熱性 | 中空構造 | 厚み必要 |
| 耐衝撃 | 高衝撃強度 | キズつきやすい |
| 透光性 | 十分な透光 | 黄変の可能性 |
UVコーティングされた製品を選ぶと黄変を抑えられます、長期使用を考えるなら重要なポイントです。
アクリル板
アクリル板は透明度が高く、視覚的なクリア感を重視する場合に向いています。
切断や穴あけが比較的容易で、DIY向きの素材です。
ただし硬度がやや低く、衝撃で割れることがあるため設置場所の条件を確認してください。
擦り傷が目立ちやすいので、表面保護フィルムを活用すると仕上がりが良くなります。
シーリング材
シーリング材は気密と防水、振動吸収に直結する重要な素材です。
主な種類は変成シリコーン系、シリコーン系、ポリウレタン系の三つに分かれます。
変成シリコーン系は塗装が可能で、仕上がりを考える場合に便利です。
シリコーン系は耐久性と耐候性に優れ、窓まわりの外周に向いています。
ポリウレタン系は接着性が高く、木材への密着が必要な箇所に適しています。
選ぶ際は材質の適合性や硬化時間、色を確認してから購入することをおすすめします。
工具の一覧
内窓DIYで必要になる主要な工具を、用途と選び方のポイントとともに分かりやすく紹介します。
安全性と仕上がりの両方を左右するので、適切な工具をそろえて作業に臨んでください。
丸鋸
木材の長さを正確に切る際の基本工具です。
直線切りが中心になるので、刃の径と刃先形状を用途に合わせて選んでください。
切断面をきれいに仕上げたい場合は、目立てが細かい刃を使うと良いです。
安全のため、切断時は定規やガイドを使ってブレを抑えてください。
トリマー
溝加工や面取り、雌口の作成に威力を発揮する電動工具です。
高さ調整やビットの選定が仕上がりを左右しますから、慣れていない場合は低速で試してください。
- ストレートビット
- アリ溝ビット
- 面取りビット
- 溝用ルータービット
ビットの直径と刃先の形状は、作る溝やフィットする面材の厚さを確認して決めてください。
ジグソー
曲線切りや小さな切り抜きに向く工具です。
刃の選択で切断の粗さが変わりますから、細かい刃で精密に切ると仕上がりが良くなります。
窓の角やレールの切り欠きなど、丸鋸では難しい箇所の処理に使います。
電動ドリル
ビス穴の下穴開けやダボ穴の加工に不可欠なツールです。
トルク調整機能があるタイプを選ぶとねじ山の潰れを防げます。
穴あけは垂直を意識して、ジグやガイドを使うと精度が上がります。
クランプ
部材を固定しながら接着や組立てを行うための必需品です。
| 種類 | 用途 |
|---|---|
| F型クランプ スライドバークランプ |
部材の仮固定 長尺の締め付け |
| スプリングクランプ 小型ハンドクランプ |
薄物の保持 一時的な位置決め |
| クイックリリースクランプ 角度固定クランプ |
素早い固定と解除 角材の保持 |
複数サイズを用意して、接着乾燥中のズレを防いでください。
サンダー
仕上げ研磨に使う工具で、面の平滑化や塗装前の下地処理に役立ちます。
電動サンダーは作業スピードが速く、均一な研磨が可能です。
仕上げは番手を段階的に上げて研ぐと美しくなりますので、粗目から細目へと移行してください。
木枠組立手順
ここでは内窓用の木枠を確実に組み立てるための手順を段階的に解説します。
治具作成から隙間調整まで、現場で役立つコツを織り交ぜて説明いたします。
治具作成
治具は精度を出すための要となり、最初にしっかり準備しておくと後工程が格段に楽になります。
木枠の直角や溝位置などを繰り返し確保できるシンプルなジグを用意してください。
- 直角ジグ
- 溝ガイド
- ドリルストッパー
- クランプガイド
既製の治具がなければ合板と角材で即席のガイドを作ることも可能です。
角の組み方
まずは角の種類を決めます、見た目と強度のバランスで仕上がりが変わります。
見た目重視なら45度の斜め切りで組む斜め継ぎが向いています、ただし接着面が少ないため補強を考えてください。
強度重視なら相欠きやホゾ組みなど、面接触が多い継手を選ぶと安心です。
接着剤は木部専用のPVACを基本に、必要があれば補助的にビスやダボで固めてください。
組み付け時は必ず矩尺で直角を確認し、クランプでテンションを均等にかけて固定します。
溝加工
面材やガラスをはめる溝は深さと幅の許容を現物合わせで詰めることが重要です。
トリマーやルーターで溝を掘る際はガイドフェンスを使い、複数回に分けて浅く削って精度を出してください。
試し材で必ずテストカットを行い、面材の厚みや膨張を考慮して余裕寸法を決めます。
切削中は切りくずが溝に溜まると寸法精度が狂うため、こまめに掃除しながら進めてください。
ダボ接合
ダボは位置決めが楽で見た目もすっきりするため、木枠の仮組みや補強に向いています。
ダボ穴は治具やドリルストッパーで深さと位置を揃え、孔の中心がずれないように気をつけてください。
通常の木枠ならφ8〜φ10mmのダボを用い、穴の中心間隔は端から約30〜50mmを目安に配置します。
接着はダボと孔に薄く均一に塗布して、はめ込んだらすぐにクランプで圧着してください。
余分な接着剤は乾燥前に拭き取り、乾燥後に段差があればサンディングで整えると仕上がりが美しくなります。
ビス固定
ビス固定は構造的な安心感を得るための最終手段で、下穴や沈め加工をきちんと行うことが肝心です。
用途や見た目に応じて適切なビスを選んでください。
| 種類 | 用途 |
|---|---|
| 木ねじ | 一般組立 |
| コーススレッド | 野地板固定 |
| 皿ビス | 面を平らにする |
| ステンレスビス | 屋内外共用 |
ビスは板厚の2倍前後の長さを目安に選ぶと強度が出やすいです。
下穴を開けてからビスを入れ、皿ビスは座グリで頭を埋めると表面の仕上がりが良くなります。
隙間調整
木枠を現場に収めた後は、必ず四隅と中心の隙間を確認して均一に調整してください。
厚紙やプラスチック製のシムを用いると微調整が簡単にでき、後から抜くこともできます。
気密や振動対策として薄手のフォームテープやネオプレンパッキンを使う方法も有効です。
必要に応じてカンナやサンダーで当たりを調整し、最終的に窓の開閉をスムーズにしておきましょう。
調整後は隙間にコーキングでシールを行い、結露や雨水の侵入を防ぐと安心です。
はめ込みと気密・断熱処理
内窓の性能は、はめ込み作業と気密・断熱処理で大きく左右されます。
ここでは実務で使えるコツと失敗しない手順を具体的に解説します。
面材挿入
面材は傷つきやすいので、取り扱いは慎重に行ってください。
保護フィルムが付いている場合は、最後の仕上げ直前まで剥がさない方が安全です。
まずは枠の溝やゴムパッキンに汚れやごみがないか確認します。
面材を斜めに入れてから垂直に戻すと、枠への負担が少なくなります。
ガラスやアクリルはたわみやすいので、中央からはめ込むようにしてください。
レール固定
レールは滑りやすさと耐久性のバランスを見て選定してください。
固定の際は必ず仮止めをして、スムーズに開閉するか確認します。
下部レールは荷重がかかるため、座面全体に均等にビスを効かせると良いです。
ビス位置は事前に穴を開けておき、割れや変形を防止します。
最後に実際に何度も開閉して微調整を行ってください。
すき間テープ
すき間テープは気密性確保と防音に直結する重要なパーツです。
- EPDMフォーム
- ウレタンフォーム
- シールテープ
- ブラシシール
テープは接着面をきれいにしてから貼り付けると、長持ちします。
圧着は均一に行い、端部の浮きがないか必ず確認してください。
コーキング
用途 おすすめ
| 対象箇所 | 適したコーキング |
|---|---|
| 屋内のすき間 | 低臭タイプ |
| 外周の防水 | 耐候性シリコーン |
| 可動部周辺 | 変成シリコーン |
コーキングは隙間を埋めるだけでなく、接着と防水の役割も果たします。
使用前にプライマーが必要か確認し、指示に従って下地処理を行ってください。
押さえ仕上げはヘラを使って均一に行い、表面に気泡が残らないようにします。
養生期間は製品によりますが、完全硬化まで待つことが大切です。
断熱テープ
断熱テープは熱橋を減らす簡単で効果的な対策です。
アルミ蒸着タイプや厚手の発泡タイプなど、用途に合うものを選んでください。
接着面は平滑にしてから貼り、重ね幅は5〜10ミリ程度を目安にします。
結露対策
結露対策は気密だけでなく、換気と熱管理を組み合わせることが重要です。
内窓の縁に透湿性のあるテープを使うと、内部結露を抑えやすくなります。
吸湿剤をレール周辺に置くと冬場の水滴対策に有効です。
定期的に開閉して換気し、窓面の温度差を小さくする工夫も忘れないでください。
施工後の点検とメンテナンス
施工後はまず外観と機能を確認します、合わない箇所や傷、隙間の有無をチェックしてください。
引き違いなど可動部は何度か開閉し、レールの滑りやビビリ、固定金具の緩みを確認します。
コーキングやすき間テープは硬化や剥がれが起きやすいので、定期的に触って弾力を確かめ、必要なら早めに打ち替えます。
結露が出やすい冬場は特に内部の湿気と断熱状態を観察し、ポリカやアクリル面材の曇りや変形がないか点検してください。
掃除はレールのゴミ取りとシールの交換を中心に行い、ネジの増し締めや塗装のタッチアップも忘れないようにしましょう。

