図面を見て窓の表記が分かりにくく、担当者に確認を何度もしてしまった経験はありませんか。
記号の種類や開閉方向、寸法とサッシ略号、ガラス表記などが混在すると施工や発注でミスが起きやすくなります。
この記事では図面における窓の表記を、基本記号から平面図・立面図での書き分け、納まり図まで順を追って整理します。
さらに窓種別の略号一覧や防水・断熱・気密など設計施工で注意すべき表記も具体例を交えて解説します。
読み進めれば現場での誤読を減らし、発注や施工の手戻りを抑える実践的なチェックポイントが身につきます。
まずは基本記号から確認して、続きを参照してください。
図面における窓の表記
図面上の窓表記は、設計者と施工者、サッシメーカーの共通言語となります。
誤解を招かない明確な記載が、発注ミスや現場手戻りを防ぎます。
基本記号
基本記号は窓の種類や位置を一目で示すため、図面の冒頭に凡例を置くことが望ましいです。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| □ | 窓の外形 |
| ↔ | 水平可動方向 |
| ↕ | 垂直可動方向 |
| ▲ | FIX窓 |
凡例はプロジェクトごとに統一し、図面タイトルブロック近くで参照できるようにしてください。
開閉方向記号
開閉方向は平面図や展開図に矢印や開閉アークで示します。
引違いは両方向の矢印で、片引きは片側矢印で表すことが多いです。
開き戸や横滑り出しは回転中心を明示して、開口半径や干渉範囲を確認してください。
寸法表記
窓の寸法は一般に幅Wと高さHで表し、W×Hの形式で記載します。
枠見付け寸法と開口寸法の区別を明確にし、どちらを指示しているかを凡例で示すべきです。
複層ガラスや木製枠など特定仕様では、部材厚を含めた仕上げ寸法を追記してください。
サッシ略号
サッシ種類を略号で記すと図面がすっきりしますが、凡例との整合性が重要です。
- 引違い:引違
- 片引き:片引
- 横滑り出し:横滑
- 縦すべり出し:縦滑
- 上げ下げ:上下
- FIX窓:FIX
- 天窓:天窓
略号は図面ごとに統一し、仕様書と突合せて誤記を防いでください。
ガラス表記
ガラスは板厚や複層構成、Low-Eや合わせガラスの有無を明記する必要があります。
複層ガラスは「5-12-6」などのように各層と空気層幅を並記して表します。
防犯や防災性能が求められる場合は、強化ガラス、合わせガラスの等級や規格も併記してください。
注記・備考
特記事項や現場判断事項は注記欄にまとめて、拾い出しや発注時の参照にしてください。
例えば、現場切断の有無や既存との取合い、施工時の仮養生条件などを明示した方が安全です。
納まりに関する許容誤差や検査基準も備考に入れておくとトラブル回避になります。
納まり図
納まり図は窓と壁、サッシ周辺の詳細を断面で示す重要な資料です。
頭部、側部、下部のシール、フラッシング、断熱材の納め方を寸法付きで示してください。
アンカー位置や下地の形状、施工順序の注意点も図示しておくと現場での理解が深まります。
平面図での窓表記
平面図では窓の開閉や位置を直感的に示すことが重要で、施工や製作の誤解を防ぐ役割があります。
ここでは開閉記号から寸法、配置番号まで、実務でよく使われる表記ルールと注意点を解説します。
開閉記号
平面図で最も目にするのは開閉方向を示す記号で、扉と同様に図示されることが多いです。
片開きや両開きのケースでは弧線で開き方向を示し、弧の向きで室内外への開放を判断できます。
引違い窓は二本の平行線で障子を示し、開放する側に矢印やハッチを付けて動方向を表すことが一般的です。
横すべり出しや縦すべり出しは、障子の一端に小さな矢印を付けることで外向きか内向きかを区別します。
開放状態を破線で追記する場合は、部屋の家具配置や避難経路に関わるときだけに限定し、図面を見やすく保つことが望ましいです。
枠位置表記
枠の位置は仕上げ面や壁芯からの位置関係が重要で、平面図上に記号や寸法で明示する必要があります。
図面間で基準がズレると現場で取り付け不具合が起きやすいので、断面図や詳細図との整合性を必ず確認してください。
- 内法基準
- 外法基準
- 壁芯基準
- 開口中心
開口寸法
平面図での寸法表記は、まず内法寸法を基本として記載することが多く、施工的にもわかりやすいです。
外法寸法や枠外寸が必要な場合は、注記で種類を明示し、仕様書と不整合が起きないようにします。
開口寸法にはクリアランスや納まり公差を付けて記載することが推奨され、製作誤差を考慮した余裕を確保してください。
| 表記 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| W | 幅 | 900 |
| H | 高さ | 1200 |
| W×H | 開口寸法 | 900×1200 |
配置番号
窓ごとに固有の配置番号を振って、平面図とサッシ表を連携させる運用が一般的です。
番号は階ごとや室ごとに体系化しておくと、拾い出しや発注が楽になり、工事監理でも混乱を避けられます。
記号体系の例としては接頭辞に窓種コードを付けてから連番にする方法が分かりやすく、W01やS02といった表記が使われます。
配置番号は必ずサッシ表と照合し、一致していることを施工前に最終確認してください。
立面図・展開図の窓表記
立面図や展開図では、窓の高さや見付け幅、納まりの詳細が明確に表記されます。
これらの表記は現場での取り合いや仕上げ品質に直結しますので、平面図との整合を必ず確認してください。
高さ表記
窓の高さ表記は、基準となる床レベルからの寸法で示すのが一般的です。
表記には完成床レベルを示すFFLや躯体基準のGLを明記し、基準の違いで誤認が起こらないよう配慮します。
サッシ上端や下端、ガラス中心高さなど、複数の高さを併記する場合は略号を統一してください。
例えば枠下端をH=900、枠上端をH=2,100のように記載し、単位はmmで統一するのが慣例です。
高さ表記は断面図や躯体納まり図と突合し、仕上げの厚みや墨出し位置を確定します。
見付幅表記
見付け幅は立面上で見える枠の幅を指し、仕上げとの関係で寸法が変わります。
現場での見え方を優先し、左官や内装仕上げを含めるかどうかを明確にしてください。
- 枠見付のみ
- 仕上げ込み
- 仕上げ除外
- 目地無し指示
見付幅を表記する際は、どの面を基準に測るかを注記し、複数箇所で取り違えがないようにします。
サッシ納まり図
サッシ納まり図は窓の取付け詳細を示す重要な図面です、断面や詳細図を必ず添付します。
納まり図には防水層の位置、断熱材の範囲、気密処理の方法を明記しておくと施工側の判断が容易になります。
| 納まり | 主な表記項目 |
|---|---|
| 外装取り合い | 防水シート 水切り 表面仕上げ |
| 内部取り合い | 見切り材 石膏ボード 仕上げ高さ |
| 断熱取り合い | 断熱材 厚み 気密層 |
| 防火対応 | 防火性能 指定仕様 |
表内の各項目は図面番号や断面符号で参照し、施工図と整合させてください。
見切り・仕上げ表記
見切りや仕上げ表記は、特に外装と内装の取り合いで細かい指示が必要です。
見切り材の材質や断面形状、仕上げの塗装色や鏡板の有無などを注記します。
シーリングやジョイントの幅、充填材の種類や耐候性についても仕様を明確にしておくと長期性能が確保されます。
施工順序や現場での調整余裕、最小納まり寸法なども図面に加えておくと手戻りを防げます。
最終的には、立面図と納まり図を照合して、現場での取り合いが問題ないことを確認してください。
窓種別の略号一覧
図面で使われる窓の略号は、設計や施工、発注をスムーズにするための共通言語です。
ここでは一般的に使われる略号と、図面上で注意すべきポイントを窓種別ごとに整理してご説明いたします。
引違い窓
引違い窓は最も一般的な窓種で、図面上では「引違」や「引違い」と略されることが多いです。
開閉方向や枚数、引き分け位置は平面図や展開図で具体的に示されるため、略号だけで判断せず図記号を確認することが重要です。
| 略号 | 図面表記例 |
|---|---|
| 引違 | 引違い窓 |
| 片引 | 片引き窓 |
| 横滑 | 横滑り出し窓 |
| 縦滑 | 縦すべり出し窓 |
| 上下 | 上げ下げ窓 |
| FIX | FIX窓 |
| 天窓 | 天窓 |
上の表は図面でよく見かける略号を一覧にしたものです。
片引き窓
片引き窓は片側にのみ障子がスライドする仕様で、図面上は「片引」や「片引き」と略されます。
出入口に近い側に設置されることが多く、開口方向を明記しておかないと施工時に混乱が生じます。
横滑り出し窓
横滑り出し窓は通風を取りやすく、図面上では「横滑」と表記される場合があります。
サッシの押し出し方向や最大開口角度は補足記号や注記で示されることが多いので、必ず確認してください。
縦すべり出し窓
縦すべり出し窓は竪方向にすべる開閉をする窓で、略号は「縦滑」や「縦すべり」と表示されます。
縦方向の操作性や風圧に対する注意が必要なため、取り付け高さと合わせて注記を確認することをおすすめします。
上げ下げ窓
上げ下げ窓は上下に移動する障子を持つ窓で、図面上は「上下」や「上げ下げ」と略されることが多いです。
重りやバランス機構の有無、開閉の制限なども図面に示される場合がありますので見落とさないでください。
FIX窓
FIX窓は開閉しない固定窓で、略号はそのまま「FIX」と表記されることが一般的です。
採光や景観確保のために使われますが、換気を伴わない点を設計段階で考慮しておく必要があります。
天窓
天窓は屋根面に設ける窓で、図面上では「天窓」と表記されるか、メーカー略号が使われます。
採光や換気、排水、点検方法など確認すべき項目が多いため、用途に応じた仕様を明確にしておくと安心です。
- 採光確保
- 換気用途
- 屋根排水配慮
- 点検・清掃導線
設計・施工で注意する表記
窓まわりの表記は設計と施工の間で齟齬が出やすい箇所です。
図面に書かれた短い記号や寸法が現場での施工順や材料選定に大きく影響します。
このため、特に防水や断熱、気密に関する表記は具体的に記しておくことが望ましいです。
防水表記
防水表記は雨仕舞いの要点を明確にするため、最優先で詳しく書いてください。
フラッシングの位置や立ち上がり高さ、シーリングの種類は必ず記載しておくと現場での誤解を防げます。
例えば、縦目地の処理や水切り金物の納まりに関しては図面注記で施工順と材質まで指定することが実務上有効です。
シール剤の色や可使温度域など、性能に関わる情報も追記しておくと長期的な維持管理で役立ちます。
断熱仕様表記
断熱の表記はガラスやサッシの性能値を明確にすることが基本です。
U値や熱貫流率、ガラス構成や充填ガスの有無まで記載すると省エネ設計の基準を満たしやすくなります。
| 項目 | 表記例 |
|---|---|
| ガラス性能 | Low-E複層ガラス |
| 熱貫流率 | U値0.95W/m2K |
| 枠断熱 | 断熱樹脂スペーサー |
断熱に関する数値表記は規格や基準値と合わせて示すと審査や施工がスムーズになります。
気密表記
気密性能は測定値や等級で示すと判断が容易になります。
例えば気密等級や気密測定の要求有無、施工後の測定方法を注記しておくと良いです。
施工者にはシーリングラインや貫通部の処理方法を図示して、どこで気密が確保されるかを明確にしてください。
防火・防煙表記
防火や防煙に関する表記は法令適合性に直結しますので、正確さが求められます。
防火区画に面する窓については防火設備としての種別や認定番号を図面に記載しておく必要があります。
また、煙感知器や防煙シャッターとの連動がある場合はその連結方法や電気配線の注意点も明記してください。
取付順序表記
取付順序の表記は施工間の取り合いをクリアにする役割があります。
特にサッシ搬入から外装仕上げまでの段取り、シーリングやフラッシングの順序を明確にしておくとトラブルが減ります。
- サッシ仮付け
- レベル確認と調整
- 防水フラッシング施工
- シーリング打設
- 外装仕上げ戻し
図面に標準的な取付手順を示すことで、現場の職人間での認識差を減らせます。
実務での最終確認ポイント
実務での最終確認ポイントは、図面と現場の整合性や性能仕様の再確認が中心になります。
設計意図が現場に正しく伝わっているか、寸法や公差が図面通りか、納まりが施工可能かを細部まで確認してください。
施工ミスや手戻りを防ぐため、関係者全員で最終合意を取ることを推奨します。
- 図面番号と改訂履歴の一致
- 開口寸法と見付幅の整合
- サッシ品番とガラス仕様の特定
- 防水・気密の施工方法確認
- 断熱仕様と仕上げ色の一致
- 取付順序と納まり図の確認
- 防火・防煙性能の適合確認
- 現場責任者との最終打合せ

